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レクチャーを数年間やってきて痛切に感じることは、ヌース理論の入口で多くの人がつまづいてしまい、なかなか理論そのものの醍醐味を堪能できていない、ということである。もちろん、これはわたしの解説の仕方が拙いことが一番の原因でもあるのだが、とにもかくにも、ヌース理論の核心は、この入口の部分にあるので、そのことについて今日は少し書いておこうと思う。
"反転のコスモロジー"と銘打っているように、ヌース理論とは、人間の空間認識を四次元方向に反転させることによって意識世界を素粒子世界とドッキンキグさせ、そこから宇宙創造のルートを虚時間の中で想起していくという思考の試みである。四次元方向への反転とは、簡単に言えば、モノの内部性と外部性の認識を反転させる、ということだ。内であったところを外に見て、外であったところを内に見る。それが、反転の第一歩である。通常、このような反転はテニスボールの裏返しのようなイメージで捉えられがちだが、経験から言って、そういうバタくさい思考方法ではいつまで経っても反転した世界には侵入することはできない。反転はイデアの内ですみやかに決行されるものであり、表象的な思考は四次元のカベに当たってことごとく跳ね返されると思っていい。反転空間への活路が開かれることをヌース理論では「表相の顕在化」と呼ぶが、これは、世界をイマジナリーなものからレアルなものへと引き戻すことを意味する。と言ってもさほど難しいことではない。君自身の目の前の現実へと戻ればよい。ただ、それだけだ。
例えば、一般に主体が対象を認識している状態がどのようにイメージされているかを考えてみよう。おそらく、それは、図1のように捉えられている。まず、三次元の空間内に対象があり、そこに観測者(主体)がいる。観測者は視覚によってこの対象から放たれた光を知覚し、その知覚情報が視神経を通って脳がこれを認識する――というように――。
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このときの主体と対象の関係を幾何学的に素描すると、図2のような三角形SBGで現わすことができる。点Sが主体の視点で、線分OTが対象で、線BGが対象の背景となる空間だ。そして、通常わたしたちは、線分BGを対象の外部、線OTの部分を対象の内部と呼んでいる。
一方、主観的な空間、つまり視覚空間では、対象と観測者の視点の関係は図3のようになっている。まず最初に視界ありき。そして、その中に対象を縁取っている輪郭が存在し、対象の背後にある奥行き方向のマクロな空間は対象の内部側に収縮していくように見える。月はリンゴの後ろに隠すことができる。それは視覚空間上ではいくらマクロなものでも、遠ざかればどんどん縮んでいってしまうからだ。
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ここで、客観的な空間上で思考していた〈視点-対象-空間〉の関係(図1)と、主観的な空間上でのそれ(図2)の関係を比較してみよう。すると、包含関係が反転していることがすぐに分かる(下図4)。
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つまり、客観的な空間においての、視点-対象-空間の関係は、赤い三角形に示されるがごとくだんだんと拡大していくが、主観的な空間においてのそれは、青い三角形のように収縮していくのだ。つまり、図2では点と見なされていたものが、図3では面となって、点だったものが対象の輪郭を包み込んでいる状況が起きている。このような内-外の相互反転関係を現わしているのが、辞書の方の「アクアフラット」の項目に載せてある交合円錐の図だと考えてもらえばよい(辞書の方では双対として他者の空間認識を付け加えている)。三次元ユークリッド空間的なミクロとマクロの双方向はこの図で言えば中央の交差部分に生まれている。この交差部分は実は自他の視覚空間(4次元)からの射影のようなものである。
人間の内面においては、Oが点に見える。
人間の外面においては、∞が点に見える。
ということは、
人間の外面においては、∞と0が一致するということになる。
その一致が君である。
星空を見上げてみよう。それは今まで通り、無窮の宇宙空間と呼んでいいものには違いはないが、同時にまた、それは君の瞳の中の空間でもある。そこでは、映画『コンタクト』のオープニングのように、全宇宙は君の瞳孔という一点の中に包み込まれているのだ。視点と呼ばれていたものを一つの超平面にかえること。点の中に君自身が入りさえすれば、その風景はすぐにでも現出する。この人知れぬ静謐な変身の身ぶりが「顕在化」と呼ばれる意識進化の出来事であり、そこでは含むものと含まれるものとの関係が、まさに、生と死の垣根を超えるような命がけの反転を決行しているのである。点が円環を内包するとき、聖母マリアの胎にイエスは宿り給う――汝、開眼せよ――オープン・ユア・アイズ。
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