ウィンターボトム監督

inthisworld

 連休ということで、DVDをたくさん借りてきた。さっそくマイケル・ウィンターボトム監督の「in this world」を鑑賞。

 この映画、数年前、話題になっていた(ベルリン映画祭金熊賞受賞)のでタイトルだけは知っていたが、なかなかよい映画だった。テーマは自由への逃走。舞台はアフガン。今はほとんどの人が忘れ去ってしまっているあの「タリバン」のアフガンである。

 この映画を観て再度、思い出させられたが、アフガンってほんまに可哀想な国である。80年代はソビエトに無茶苦茶にされ、その結果、あのタリバンが台頭。今度はアメリカがしゃしゃり出てきてタリバンを蹴散らしたはいいものの、あとは知らん顔。結果、国状は20年前とは比べ物にならないほど荒廃し、困窮し、今や難民だらけの国になってしまった。映画はそんなアフガンの一地方の村から将来を夢見てロンドンに渡ろうとする少年とその従兄弟の決死の道中記を描いたものだ。当然、難民のロンドン行きであるから、国費留学とかワーキングホリデービザなどといった悠長な話であるはずがない。不法移民の命がけの逃避行である。アフガニスタンからパキスタン、バキスタンからイラン、トルコ、イタリアと一種のロードムービーのスタイルで話は進んで行くのだが、とにかくドキュメンタリータッチの撮影手法がうまい。おそらく、ほとんど手持ちの8mmビデオカメラで撮っているのだろう。それらをあとで巧みにデジタル処理して、独特のfact感、リアル感を演出している。特にイランからトルコへ冬山を越境する場面の赤外線撮影の映像には思わず息を飲んだ。

 ちなみにこの映画の主役を演じている少年ジャマールくんと従兄弟役のエナヤトゥーラくんは、実際にともに難民キャンプで育った人たちらしい。というか、出演者のほとんどが素人ではないだろうか。。とにかく、実写もののドキュメンタリーを観てるようなリアルさだった。アフガンの窮状をとことん思い出させてくれただけでも★★★★の作品。みんなも忘れ去られてしまった、中村さんのペシャワール会に寄付しよう。中村さんは博多の人なのだ。