シンデレラマン

img20050918「シンデレラマン」という作品をDVDで観る。実をいうと、この作品で主役を張っているラッセル・クロウとレネー・ゼルウィガー、双方ともわしの好きな俳優ベスト5に入る。作品の内容は、ハリウッド作品お決まりの家族愛ものというのは十分に承知していたが、二人の演技を観たかったので、借りることに。

 物語は1920から1930年代にアメリカに実在したプロボクサー、ジム・ブラドックの半生を描いたものである。この時代はご存知の通り大恐慌時代で、アメリカ国内の失業者数は1000万人以上にも上り、多数の人が理由もなくホリエモン状態を食らっていた苦節の時代であった。体調不良や度重なるケガのため、試合で生彩を欠くジムは、ある日突然にプロボクサーのライセンスを剥奪される。波止場で日雇いの荷役夫として重労働の日々を送るものの、愛する妻と幼い3人の子供たちとの生活は極貧を極める。そんなジムにある日、再度、リングへのお呼びがかかる。果たして、ジムはこの千載一遇のチャンスを見事ものにできるかどうが——物語はそのように進んで行く。

 監督のロン・ハワードは多作の老練監督で、最近ではTV映画「24」の製作に参加したり、同じくラッセル・クロウ主演の「ビューティフル・マインド」でアカデミー賞監督賞を受賞したりもしている。まっ、いわば一流さんだ。若かりし頃の作品には「コクーン」や「バックドラフト」等の話題作はあったが、どちらかというと、最近の作品の方が質が確実に上がってきている感じがする監督さんである。この夏の話題作「ダヴィンチ・コード」もこの監督さんだったんじゃないかな。。。

 さて、こうしたベテラン監督さんの作品であるがゆえに、作品自体は実によくできていた。落ち着いたカメラアングル。しっかりとした心理描写。それに見合った役者さんたちのケチのつけようのない演技。泣きのツボを1mmと外さない脚本と演出。もちろん、わたしも製作者たちの術中にはまりウルウル、ウルウルのしっぱなしだった。ラストシーンも「ロッキー」のような「えいどりわぁ〜ん」のような決めの一発があるわけではなく(笑)、実話らしくごく自然に淡々と編集されている。それでいて泣けるわけだから、作品の充実度についてはケチのつけどころはない。が、しかし、がしかしだ。やっぱり何か物足りない。これだけの役者とセットと物語の実在性を使って、どうして、今もなお、アメリカン・ドリームなの?という素朴な疑問が脳裏から離れんのです。 

 今の時代、映画は言うに及ばず、音楽やコミックやゲームなど、エンタメカルチャーは至るところに氾濫していて、僕らのナルシシズム回路はもうすり切れるほどピストン運動させられてしまったじゃないの。。ハリウッドだってそんなことは百も承知のハズ。しかし、ハリウッドはやっぱりいつもハリウッドなんだよな。ハリウッドにハリウッド以外のテイストを期待しようとているわしもアホだけど、わしは大学の映研が作るような安っぽい実験映画は実のところあんまり好きではなくて、制作費たっぷりの、ゴージャスでグラマラスで、かつブットビの逸品を期待しとるんだよね。

 嗚呼、今となっては「2001:space odyssey」や「時計仕掛けのオレンジ」や「地獄の黙示録」がほんま懐かしいです。最近のハリウッドは、どうして、あの手の変化球を投げてくれんのだろ。「イージーライダー」以来、根っからの映画好きで、中学生の頃からハリウッドを追いかけてきたわしだけど、そろそろ潮時かもしれんね。。アメリカ製品には、もう何を見てもブッシュの演説と同じ嘘臭さしか感じなくなってしまったよ。。ごめんなさいね。ラッセル&レネーさん。

でもハリウッドの名誉のために言っておくと、連中はバカじゃない。無茶苦茶優秀。大衆に受けなければならないという制約の中で、いかに実験的なことをやるか。。やっぱり、これって大事なのかも。。エンタメの中にいかに規制の価値を揺さぶる劇薬を仕掛けるか。。アカデミズムの中に閉塞した学者の先生たちにはこうした観点が皆無だからなぁ。。やっぱ、エンタメは捨てるべきじゃないな。。