宇宙的性愛について

物質はドゥルーズが言うように精神の襞-地層のようなものだ。そして、この地層の最も深い部分は物質の表面として現れている。精神の地層は中心核から表面に向かって積み上げられているのだ。最も高度に地層化された精神は人間の肉体であり、それゆえ人間の皮膚こそが活動する精神の最先端の現れということになる。人間の意識は新たな先端の創成に向けてこの皮膚から発生している。

だから、人間は「触れること」において始まる知覚によって旧精神との〈折衝-かけひき〉を絶えず行っていると考える必要がある。知覚は旧精神と新しく生まれでようとしている精神との間で揺れ動き、ときに権力化し、ときに反権力として振る舞おうともする。それは男の知覚と女の知覚の拮抗とも言えるし、また公的知覚と私的知覚の闘争でもある。

女の知覚には生命の苗床がセットされている。女の知覚は物質の中心部に深く入り込み、物質の胎盤を持っているのだ。それは精神を刷新するため与えられた場所とも呼んでいいもので、プラトンはそれを=コーラ(子宮)と呼んだ。幾何学の本質(プラトン立体が眠る場所である)
男の知覚はファルス(神の男根)に従属しており、それは一者に仕えたいというオイディプス的な本能を持っている。陰茎は同一性の象徴だろう。精子とは文字通り古い精神=神霊の息子たちの異名であり、多数化するロゴスの様態を表している。

一方、卵子とは女の知覚の総体である。女の知覚は物質の胎盤という意味で素粒子のシステムと区別することはできない。素粒子もまた存在の子宮と呼べるものであると思われるからだ。種子としてのロゴスはこの子宮に向けて光の作用として放たれている。その意味からすれば、人間の歴史におけるすべての言語的コミュニケーションとは男神と女神の生殖の場とも言えるものだ。光とともに無数の言語が知覚に飛び込んではくるが、言語は知覚の場そのものをいまだキャッチすることができていない。一者の呪縛からの逃走能力を持つ精子は稀である。

女の知覚が待機しているもの——それは言語と知覚の完全なる一致である。この一致が本来、概念=conception(妊娠)と呼ばれる出来事の本質である。それは見るものと見られるものの一致に起こる思考の変質にほかならない。その思考から放たれる言葉において初めて精子は受精能力を持つのである。

卵子は7つの知覚振動の波束によって胎動している。[触覚、味覚-嗅覚、視覚、聴覚][運動感覚、言語感覚][自我感覚]——この中に卵が個体化を行っていくためのすべての原-情報が詰まっている。卵割=原腸形成、内胚葉-外胚葉、中胚葉という受精卵の成長はこの3つのグループで分けられた七段階の波束に沿って進められていく。これがドゥルーズのいう個体化のシステムである。ここにおいては死と生は一致している。

星の発生と、胎児の発生は、われわれが予期せぬところで重なり合っているのである。

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