純粋思考による複素2次元空間の彫塑

複素空間を構成する虚軸と実軸は、基本的には、それぞれ持続とイメージを作り出す働きを持っていると考えるといいと思います。つまり、イメージを貯蔵したり、産出しているものが数学の世界の中では複素空間として形式化されているということですね。

単なる虚軸や実軸にそんな力がなぜ入り込めるんだ?と考える人がほとんどかもしれませんが、「ありてあるもの」の力には起源などない、とまずは英断を下すことが大事です。そしてこの「ありつづけている」力が人間においては記憶やイメージの力として現れていると考えましょう。

普通は、こうした力は脳に還元され、複雑な有機物が構成する電気的なネットワークの中に生じるものだと考えられているわけですが、その考え方でも結局は量子脳理論のように虚軸と実軸からなる複素空間へと話は還元されざるを得ません。

4次元時空は事物が客観的にあるとされる場所ですが、時空は反転すると二つの方向に分割されます。この分割が自己と他者におけるそれぞれの主観的空間です。主観的空間にあるのは事物ではなく、記憶とイメージだということが分かります。それをとりあえず、虚軸と実軸に置いてみようというわけです。

このことは同時に、主観を客観から差異化させるための数学的形式と考えることもできます。同一性から抜け出す最初の契機です。こうした形式化の力はバカにできなくて、空間を二重化させてみることを容易にしてきます。

一つは社会的個が言語とともに生きる延長的時間の空間であり、もう一つは精神的個が持続とともに生きる根源的時間の空間です。後者には時間はありません。記憶の貯蔵庫のようなものですから。

複素空間というのは必ず回転しています。しかし、回転というのは時空から見たときの状態であって、複素空間自体は純粋な球としてあるだけです。このことから表象の生成は時空と複素空間の恊働によって為されているということが分かります。一瞬と永遠の接点。それが表象(この場合、対象の見え)です。

ですから、複素空間そのものについて思考するためには表象から離れなくてはなりません。表象には頼らない思考、つまり、純粋思考が必要になるのです。

この純粋思考は、持続そのものが自らの身体性をどのように形成していくのか、それを自覚していく思考になります。言い換えれば、魂、自らが、自身の姿を反省し、それを彫塑していくということです。

この彫塑の4段階のプロセスを経て、魂は彼岸の魂と出会い。そこに結び目を作ります。自他の内的結合が行われている場所です。この結合を外に広げることによって、そこに自他が一体となった開けの場所が作られます。それが時間と空間です。内的結合を果たした魂はそこでは「言葉」として出現してきます。

純粋思考によるこの彫塑の様子をアニメーションにしました。まだまだ説明不足ですが、こんな感じです。ご参考までに。(Visual:Hiroyuki Fukuda /Sound:Hideaki Takahashi)