時間と別れるための50の方法(25)

●対化という概念について
 球空間という理想的な3次元空間のイメージを反転という操作によって二つに分割し、一方を主体空間(ψ3)、他方を客体空間(ψ4)として見なすように意識づけすること。そのとき、主体空間の方は極小世界にまで縮められ、従来の空間認識上では客体空間(ψ4)の原点のようなものとして現れる――ずいぶんと長い説明を要してしまいましたが、結局のところ、反転した空間ビジョンを作り出し、今まで時空の中で囚われの身となっていた物質的肉体という旧い主体概念とオサラバしましょ、ということが言いたかったわけですね。対象の中に真の主体がいる、というのはすでに哲学や神秘主義が言っていることですから、問題は、この跳躍のあとに、そこから一体何が見えてくるのか、ということです。

 ヌース理論では、この「位置の交換(ψ3の顕在化)」に続いて、「位置の等化(ψ5の顕在化)」「位置の変換(ψ7の顕在化)」「位置の等換(ψ9の顕在化)」というように、無意識のカタチを暴き出して行くための意識のトランスフォーメーション作業が次々と登場してきます。これはニューエイジ的な意味で言えば、意識を4次元以上の高次元世界へとアセンションさせていくのと同じ意味を持っているのではないかと考えられます。次元上昇です。しかし、これらの作業は一人で行なってもおそらく何の力も生み出しません。ヌースでいう次元観察子の顕在化とは別の言い方をすれば新しい宇宙の創造のことです。アドバンスト・エディションにも書いたように創造者は双子ですから、ソロでの覚醒はあり得ないと思った方が無難でしょう。宇宙におけるすべての現象は「対化」としてしか成立し得ない。これがヌースの鉄則だと思って下さい。そのため、ヌース理論ではほぼ理論の全域に渡ってこの「対化」という概念が通奏低音のように鳴り響いていくことになります。

 対化とは文字通り「対に化ける」という意味なのですが、これは単に観念としての「二分化」を意味するわけではありません。観察子の概念の使用にこなれてくると、この対化という概念の本質が、僕らが「わたし」と「あなた」と呼んでいるものの関係そのものの意味を持っていることが分かってきます。僕がいつも「永遠の汝と我」と呼んでいるものです。単に「汝と我」でもよさそうなものなのに、なんで「永遠の」などといったごたいそうな形容詞がついているのかというと、この対化が永遠に存続し続けているものだと考えているからです。つまり、宇宙は物質と精神という二元性よりも、自己と他者という二元性の方がはるかに深い起源を持っているということです。

 通常、人間型ゲシュタルトでは「わたし」と「あなた」の関係は、たまたま地球上で進化してきたホモ・サピエンスという種の中の任意の二つの個体にすぎないという見方しかされません。こうした「二」は世界に数十億、人間がいる中のある特殊な「二」にすぎず、一般性の中においてはいくらでも代用が利くものです。しかし、世界というものはいつ何どきでも「わたし」を中心に展開しているのであり、そのときの「わたし」とはここにいるかけがえのないこの「わたし」であって、他の誰かと決して代用が利くものではありません。哲学では、こうした取り替え不能な「わたし」のことを単独性と言って、任意の個体としての特殊性とは区別します。

 さて、この「わたし」が単独性であれば、当然、「わたし」と向かい合っている「あなた」もまた、別の単独性を持っていることが予想されます。こうして二人の単独者としての「わたし」と「あなた」が登場してくるわけですが、このときの「二」なる関係がヌース理論が言うところの対化の本質だと考えて下さい。詰まるところ、ヌース理論とは自己-他者の関係論でもあるということです。

 通常、他者という存在は「死」と同じで「わたし」にとっては決して伺い知ることのできない絶対的な外部です。しかし、OCOT情報では、潜在化の時間感覚にして約1万3000年に一度だけ、この彼岸への交通路が開かれ、自己-他者の相互入れ替えが行なわれると伝えてきています。その交差の場所がシリウスと呼ばれる領域であり、この入れ替えが『人神』にも登場した「次元の交替化」と呼ばれる出来事なのです。

 対化は当然のことながら二重化して、わたしから見た「わたし」と「あなた」、あなたから見た「わたし」と「あなた」というように4値の関係を作り出してきます。一般性から見ると「2」の関係だったものが、単独性によって「4」が織りなす関係に変貌するわけです。そして、この4値関係が持つ構造のことをヌースでは「双対性(そうついせい)」と呼びます。文字通り、対が双つあるという意味です。

 この双対性という概念はヌース理論にとっては極めて重要なものです。極端な話、ヌース的文脈から言えば、この双対性のシステムが宇宙におけるすべての現象をコントロールしていると言っても過言ではありません。太極図の意匠となっている「陽の中の陰、陰の中の陽」の形が示すように、ヌース理論に登場するすべての概念もまたこの双対性のシステムによって貫かれています。

Kakushin

 この双対性を最もシンプルな形で表して見ることにしましょう。すると。それは上図1に示したように十字の形を執ります。そして、この十字形の4つの端点を直線で結ぶと、正方形とその対角線を組み合わせたような形になります。この形のことをOCOT情報は「核心(かくしん)」と呼んでいます。核心はOCOTが「真実の人間」と呼ぶ神的人間の精神のカタチであり、すべてのものを生み出す観念の源でもあるということです。
 では、さっそく、この核心を一つの概念装置と見なして、次元観察子ψ3~ψ4の双対性について考えてみることにしましょう。

――つづく