エーテル空間へと反転しよう

世界が4次元時空として認識される以前に、それに先行する原-空間があると考える必要があります。この原-空間は幼児空間と言い換えてもいいようなものです。というのも、幼児においてはまだ空間の3次元性も時間における過去-未来もよく把握できていないからです。

4次元時空とこの原-空間の関係はシュタイナーのいう物質空間とエーテル空間の違いと同じと考えていいと思いますが、重要なことは物質空間を時空とするならば、物質空間の認識はエーテル空間の発達の後に起こるということです。

数学的にはこのエーテル空間を射影空間と見なすこともできますが、4次元時空の数学的成り立ちから考えると、複素2次元空間と見なすと話がうまくつながってきます。

複素2次元空間とは複素数平面2枚からなる空間のことです。実軸2本、虚軸2本、で一種の4次元空間です。ここでは実際見える空間は実2次元、つまり平面になります。残りの2本の虚軸は視線です。一本は実際の知覚を可能にする幼児の視線。もう一本は幼児に想像を与える母親の視線です。

幼児はこの4本の空間軸を使って、対象関係を育んで行きます。つまり、母親の眼差しと指差し、自分の眼差しと指差し、それを相互に確認しながら、空間を開示させていくのです。

こうした意識発達が起こっている場所は時空ではありません。そこでは敢えて3次元的に表現すれば、二種類の3次元回転が起こっています。一つは母親の視線の回転を使ってイメージされる想像的な3次元、もう一つは幼児が自身の視線を使って知覚する3次元。この二つです。

この二つの回転が十分に意識を満たしてくると、母親の視線と幼児自身の視線を一致させた共同視線が意識に生じてきます。これはシュタイナー的に言えばエーテル体の変質と言っていいようなものです。幾何学的には母親と幼児が作る二本の虚軸間の回転です。

ここにi×iというかたちで「−1」の空間が生まれてきます。これが物理学が時間と呼ぶものに当たります。シュタイナーはエーテル体の変質は悟性魂を生み出すといっていますが、時間の認識はこの悟性魂の働きによって初めて生じてくるものと言っていいでしょう。

この「−1」の視線は身体にとっては左右から侵入してきています。本来の奥行きに対して直交してくる方向です。しかし、物質空間にどっぷりと浸っている人間の普段の意識はこの左右方向を奥行きと見なし、奥行きを時間と見てしまっているのです。

フロイトではありませんが確かに「幼年時代はもうない」。時間が支配する物質空間を十分に楽しんで自我を満喫したわたしたちは再び、「幼年時代」に戻る必要があります。そしてもちろん今度は無意識的にではなく、自我を段階的に確立させていった高次の自我としての自らの無意識を意識化するのです。

知覚野を複素2次元として再構成しましょう。

それが宇宙の原初である始源(アルケー)に戻るということの本質的意味だと感じています。

facebookimg05