ドゴンの宇宙哲学『青い狐』

11月のレクチャーは冒頭でドゴンの宇宙哲学の話をしようと思っている。ドゴンの神話を専門に分析しようとしている研究者はおそらく皆無だと思うが、M・グリオールとJ・ディテルランが著したこの『青い狐』は構造主義が注目を浴びつつあった1960代のフランス思想界に一大センセーションを巻き起こし、あのドゥルーズ=ガタリも『アンチオイディプス』で結構詳しく触れている。僕がこの書物を手にしたのは1990年代の半ばぐらいだったのだが、初めて読んだときは体中に激震が走った。

ドゴンの神話体系はあまりに詳細というか、複雑すぎて頭では全く理解ができないのだが、そこで語られていく一つ一つの素朴な表現に細胞という細胞がブチブチと音を立てて反応する感じなのだ。当時、解読し始めていたOCOT情報と被るところが数えきれないほどたくさんあり、僕の中でシリウスに対する思い入れがより一層強くなった要因にもなっている。

次回、レクチャーで取り上げるということもあって、再度、読み返し始めたが、現行のヌーソロジーをベースして読むと、以前よりもより神話の語る意味の豊穣さがよく見える。この本が絶版になっているのは本当に残念だ。世界の数ある神話がその時代時代の権力者にいじられ変質を余儀なくされる中において、このドゴンの神話はおそらく人間の手によって汚されていない最も無垢なる神話ではないかと思う。その無垢さゆえに難解なものとなっているのではあるが。

昨今、スピリチュアル界隈で話題になっているシリウス星。伝統的オカルティズムでもシリウスはイシスやピラミッドとの関連で極めて重要な存在とされているが、願わくば、この『青い狐』に記されているような原形質感覚の中でシリウスについて夢想してほしいものである。

facebookimg16