ひとつの空間が 言葉を持たなかったとき
そこには まだ
物はなかった
差異は震えていた
けれど、名はなかった
名がなかったから、物はまだ
“見るもの”ではなかった
はじめに言葉があったという伝説は
それが、“物の始まり”ではなかったことを
静かに告げている
言葉は空間の片隅に
ひっそりと裂け目を開けた
そのとき、
“ある”と“ない”が 切り分けられた
言葉が空間に影を落としたとき
物は像となって浮かび上がった
“ここに在る”という
最初の確信とともに
だがそれは
物がそこに“在った”からではない
それは
言葉がそこに“指を差した”からだ
物は言葉の指差しによって
自己を獲得した
けれど
そのとき、物は
もう物ではなくなっていた
それは
言葉のかたちをした物となった
それは
物のように見える言葉となった
言葉は
物を作りながら
物に包囲されていった
物は
言葉に従いながら
言葉を押し返していった
空間は
その二つの運動で満たされた
見ることと 語ること
在ることと 意味すること
そして今──
私たちはその空間の中で
語り
見つめ
生きている
けれど、ふとした瞬間に思い出す
「この空間は 本当に“物”だったのだろうか?」
「それとも “言葉”が物のふりをしているだけだったのだろうか?」
もし言葉がなければ
物は“ただ震えているだけ”だったかもしれない
もし物がなければ
言葉は“ただ空を掴んでいるだけ”だったかもしれない
その狭間で──
いまも空間は
見えない震えを
静かに、抱いている
物は言葉を孕み
言葉は物を夢見ている
やがてそれらが再び交差するとき、
そこに
“わたし”と呼ばれる空間が
そっと、発火する。
11月 27 2025
《物と言葉の空間詩》—反性質と反定質の情景
ひとつの空間が 言葉を持たなかったとき
そこには まだ
物はなかった
差異は震えていた
けれど、名はなかった
名がなかったから、物はまだ
“見るもの”ではなかった
はじめに言葉があったという伝説は
それが、“物の始まり”ではなかったことを
静かに告げている
言葉は空間の片隅に
ひっそりと裂け目を開けた
そのとき、
“ある”と“ない”が 切り分けられた
言葉が空間に影を落としたとき
物は像となって浮かび上がった
“ここに在る”という
最初の確信とともに
だがそれは
物がそこに“在った”からではない
それは
言葉がそこに“指を差した”からだ
物は言葉の指差しによって
自己を獲得した
けれど
そのとき、物は
もう物ではなくなっていた
それは
言葉のかたちをした物となった
それは
物のように見える言葉となった
言葉は
物を作りながら
物に包囲されていった
物は
言葉に従いながら
言葉を押し返していった
空間は
その二つの運動で満たされた
見ることと 語ること
在ることと 意味すること
そして今──
私たちはその空間の中で
語り
見つめ
生きている
けれど、ふとした瞬間に思い出す
「この空間は 本当に“物”だったのだろうか?」
「それとも “言葉”が物のふりをしているだけだったのだろうか?」
もし言葉がなければ
物は“ただ震えているだけ”だったかもしれない
もし物がなければ
言葉は“ただ空を掴んでいるだけ”だったかもしれない
その狭間で──
いまも空間は
見えない震えを
静かに、抱いている
物は言葉を孕み
言葉は物を夢見ている
やがてそれらが再び交差するとき、
そこに
“わたし”と呼ばれる空間が
そっと、発火する。
By kohsen • 01_ヌーソロジー • 0